基本的に、その大学へ入学を希望する受験者が入学するにふさわしか否かは、その大学で実施される入試において判断されます。しかしながらたった1回のペーパー試験等の入試において、受験生のことを判断するには無理があることも事実です。
そんな問題点を改善するための1つとして導入されたのが、この指定校推薦になります。指定校推薦とは、大学が持つ定員枠の一部を高校に与え、大学に入学するにふさわしいか否かの判断を高校に委ねているわけです。もちろん指定校推薦であっても大学で面接などは行われますが、それは最終確認という意味合いであり、高校側がこの制をと指定校推薦で受験させるという決定をすれば、ほぼ合格することになるのです。
まず、指定校推薦は大学側が高校に対し定員枠の一部を与え、高校側で大学に学ぶにふさわしい人を選抜し推薦してくださいという制度になっています。しかしこの際、大学側は高校が推薦する生徒であるなら、誰でも良いというわけではありません。大学側から高校側に、評定や資格など、ある程度の基準を設けている場合もあります。
さらに、その基準は高校側で設定、もしくは付け加えられている場合もあります。様々な学科があり、様々な学力層の生徒が混在する私立高校などの場合には、模試の結果や資格などの基準を設定していることもあります。
このように、指定校推薦をえるためにはまず、これらの基準をクリアしておく必要があるのです。
まず、どの高校も幾つかの大学の指定校枠を持っていおり、生徒が受験を希望すれば指定校推薦の枠を得ることが出来ます。しかしながら人気がある大学の場合は、多くの生徒がその大学の指定校推薦を受験したいと希望するため、学校内で選抜が行われます。
選抜の方法は高校によってまちまちですが、評定・模試の成績・資格・活動実績などが審査の対象となるでしょう。他の生徒の評価を上回りこの選抜に通れば、指定校推薦に挑戦できる権利を得て、その大学を受験することになるわけです。
この選抜自体は8月~9月にかけて行われることが多く、自分自身が指定校推薦にチャレンジできるか否かは、高校によっても異なりますが、概ね9月の中旬から10月上旬に分かるケースが多くなっています。
指定校推薦は大学側が高校側に対して、合否判断を委ねている側面がありますから、受検しさえすればほぼ合格するわけですが、大学でも試験は行われます。この試験は面接など簡単なものである場合が多く、いわば最終確認だと考えると良いでしょう。
大学によって異なりますが、指定校推薦の試験日は11月頃行われ、合格発表は12月上旬というケースが多くなっています。
指定校推薦に関しては高校においてその権利を得られるかどうかが重要であり、その基準は各高校ごと違ったものになります。ですので他の入試と異なり、ノウハウなどはあまりありませんので、ここからはネットなどでよくみかける、指定校推薦の疑問について私が知る範囲で答えていきたいと思います。
指定校推薦は概ね、私立大学が持つ入試制度であるとお考えいただいてよいでしょう。しかしながら国公立大学であっても、指定校推薦という入試制度を持つところがあるのはご存知でしょうか?
たとえば東京都立大学や横浜市立大学では指定校推薦の制度があり、今後は地方の公立大学、そして国立大学へと広がっていくかもしれません。
偏差値の高い高校と低い高校とでは、難易度の高い大学の指定校推薦の枠の数は異なります。たとえばMARCHや関関同立といった有名私立大学は、偏差値の高い高校にはいくつもの指定校推薦の枠があります。しかしながらそうではない高校には、そうした大学の指定校推薦の枠は数少なく、指定校推薦の権利を何人もの生徒と争うことになるでしょう。
これは極めてまれなケースですが、指定校推薦でも不合格となるケースはあります。指定校推薦でも大学では面接などの最終確認が行われ、そこでの評価が低い場合には不合格になります。
可能です。実際に私の生徒も、関西大学外国語学部を総合型選抜で受験し、一次試験に合格しました。その後は二次試験を控えていたのですが、同じ関西大学外国語学部の指定校推薦を受験する権利が得られました。
その生徒は総合型選抜の二次試験より、指定校推薦の方が確実だからと、指定校推薦で受験しました。この際高校側は大学に連絡し、その旨を伝え総合型選抜は辞退しました。
よく、指定校推薦を狙っているから総合型選抜は受験しないという生徒に出会いますが、上記の生徒の様に同時並行する方がより確実であると思われます。
指定校推薦は基本的には専願ですので、合格した場合には入学する義務が生じます。受検する前に誓約書を書くことを生徒や保護者に求める高校も、珍しくはありません。
ここで、入学しなかった場合には高校側に迷惑がかかるのかという話になりますが、やはり入学しなければ高校側からは、かなりの苦情が来るかと思われます。しかしながら、過程の急な経済状況の変化などで、かなり稀ですが、入学したくても出来ないケースがあるのも事実です。
高校側が「大学に迷惑がかかる」「翌年以降、指定校推薦の枠を失う」ということを生徒側にいうこともありますが、これは無きにしも非ずですが、ちゃんとした事情を高校側が大学側に話すか否かが重要です。指定校推薦とは、大学側と高校側の良好な関係の上で成り立つものですから、一人の生徒の事例が翌年以降の生徒の影響することは、大人の世界では考えられぬことです。
ネット上に見られるこの指定校推薦制度に関するものの多くは、ほとんどが生徒や高校教師の意見であり、大学側の意見を見かけることはほとんどない。これらの意見による指定校推薦の意義は、単に大学の生徒集め、および偏差値の維持という点に集約できる。
しかし各大学を偏差値という観点で見るのは、入学時点の難易度こそが大学の価値だと捉える、いわばユーザー側の意見に過ぎない。確かに大学の入試課などはこの点には敏感だろうが、大学はそもそもそこで行われた研究などによる知識や技術の社会への還元がその役割の中心であり、それに見合う人材を欲しているというのが正直なところであろう。
もちろん、高い学力を有していることは大学での新たな学びを始めるのにスムーズに移行できる1つの能力ではあるが、中学・高校と進めてきた学習が、大学での学習と完全にリンクするわけでもない。
したがって指定校推薦をはじめとする各種推薦制度を大学側が以前より重視しているのは、1つの観点で良しとされた生徒ばかりを集めるのではなく、様々な観点から良しとされた学生を集めることでこそ、大学の役割を果たすのに必要だと考えているからだ。その様々な観点の1つが継続性であり、これを見ることが出来るのは高校教師によって実質入学者を選抜する、指定校推薦ということになる。
もちろん、ネットで見られる学生数の維持なども確かに指定校推薦が果たしている役割の1つではあるが、その理屈では有名私大が指定校推薦制度を維持している理由としては不足する。指定校推薦制度を維持する大学側の利点は1つではない。負の側面に焦点が圧集まりやすいネットの情報ばかりを見ていると、その実像にはなかなか迫ることが出来ない。大学で学ぶことや学び方には高校までとは違い、かなりの幅が生じることになる。それを一般入試という、いわば高校生が考える学力の1つで判断すること自体に無理があり、違った学力によって判断しているというのが、指定校推薦という制度を大学側が維持している理由の1つなのである。